◆『帰還兵はなぜ自殺するか』まとめ

アメリカでは、イラク戦争に派遣された兵士の、戦死者よりも、帰国後の自殺者の方が多くなったそうだ。『帰還兵はなぜ自殺するか』という本からその理由を読み解く。

即席爆弾による脳損傷とPTSD

対テロ戦争や紛争地域では、戦闘そのものよりも、移動中に即席路肩爆弾にあって死傷することが多い。即席爆弾は超音速の爆風を生じ、装甲戦車をも破壊する。

先進国の兵士はハイテク化した防護服で戦う。爆弾で吹き飛ばされても「死なない」ばかりか、体は無傷でいられるケースが増えた。重くて硬いヘルメットは爆風の圧力を増幅させ「外傷性脳損傷」をひきおこすが、外見上無傷なため、兵士はすぐに部隊に復帰する。

イラク、アフガンに派遣された兵士は年に二百回以上のパトロールに出て、平均12~15回の即席爆弾攻撃を受けた。前を行く車両が爆弾で吹き飛ばされるのを目撃し、そして自分自身も被弾を体験し、それでも同じ任務を毎日続ける、これがPTSD(心的外傷後ストレス障害)を引き起こす要因になった。職業軍人はそれが仕事とはいえ、あまりにも過酷すぎる。

外傷性脳損傷は、爆風による衝撃波が原因で脳幹に損傷を受けるもの。帰還後に精神を病むが五体満足なため周りに理解されず、人間関係を悪化させ、果ては・・・。

愛国者がモンスターになる

戦地に派遣される兵士は間違いなく、愛国心に満ち、知識も教養もあり、心身ともに健康な若者だ。命が大切であること、殺したり財産を奪ったりしてはいけないことを当然理解している。ただし「軍人」になれば、敵を殺し、建物を破壊するのが仕事だ。

 家族と過ごす時間は「人間」、戦地に行ったら「軍人」、しかし人間/軍人の切り替えに迷いが生じたら・・・。対テロ戦争では武装した男性だけでなく、家族を思い出させるような女性、高齢者、子供も敵になる。仕事が終わって宿営地に戻れば、インターネットで家族と会話できる。

家族と過ごす時間に無慈悲な殺人の記憶がフラッシュバックしたり、敵を攻撃している瞬間に敵の顔が自分の家族と重なって見えたりしたら・・・。

人間はロボットではないから、オン・オフを切り替えたり、記憶をリセットしたりはできないのだ。「自分がモンスターのような気がする」。人間の心で軍人の任務を果たし、誰にも話せない記憶を抱えて無口になり、終わりのない罪悪感に苦しむ。

衛生兵の任務

部隊が攻撃を受けたら、生死にかかわらず、速やかにボディ(死傷体)を回収するのも衛生兵の仕事。兵士はたくさんの軍事機密を身に着けているから、死体も機体も回収しなければならない。

ある衛生兵は、仲間の人数や顔を思い浮かべ、「やれやれ、全員回収できた」とほっとした瞬間に、「目は引き出せなかった五人目の兵士を見ていた」。一人、回収し忘れていたのだ。それからずっと「なぜ俺を忘れたんだ」「なぜ回収にきてくれなかったんだ」と迫るその仲間の焼死体が頭から離れない。

助けられなかった罪悪感


隠された爆弾を見つけるのが得意な兵士。その技で何度も部隊の危機を救ってきた。彼が任務を休んでいたとき、出動した部隊が爆破された。帰ってきた仲間が「あんたがいたら(そして爆弾を見つけてくれてさえいたら)仲間は死なずにすんだ」と言った。「お前のせいだお前のせいだ・・」そう言われたように感じ、罪悪感が止まらない。

民間人を殺傷した罪悪感

【悪夢】パトロールで小学校に入っていく夢。女の子たちが悲鳴を上げ、俺はクラス全員を撃ち殺す。こんな夢を見る自分、夢が止まらないことに怒りを覚える。【幻覚】死んだイラク人たちが(帰国後の自宅の)浴槽に浮かんでいるのを見たことがある。どうして浴槽にいるのか、さっぱりわからない。いま暴れまわりたい気分だ。

日本の自衛隊は安保法成立によって、米軍の後方支援として、捜索救難活動、武器等防護を担当し、戦地を移動したり、戦闘地域で負傷米兵の回収にあたったりする。国会では、憲法がどう、国会承認がどう、ということばかり議論され、戦争の実態については、他国がふつうにやっていることだから、と問題にならなかった。

しかし、戦地に派遣される自衛隊員、その家族、その友達、民間徴用される立場にある職業の人たちは、自分たちがどこに派遣され、どんな活動をし、どんなリスクがあるかに、少しは関心を持った方がいいと思う。

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anporonten

Author:anporonten
秋田県横手市在住の一市民です。
私は、「平和安全法制」の法案に関する国会の審議記録を精査し、論点と問題点を整理し、「安保法案の論点整理」のホームページで発表しました。その後、2015年度補正予算案の審議、2016年度通常国会の審議と追跡を続けています。

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