【読書ノート】『帰還兵はなぜ自殺するか』---「罪悪感」で論点整理

【読書ノート】『帰還兵はなぜ自殺するか』---「罪悪感」を追ってみた
注意:文中の四角いフレームは、『帰還兵はなぜ自殺するのか-亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ-デイヴィッド・フィンケルからの引用です。

多くの戦闘現場と、自殺者・自殺未遂者を見てきたある米軍の将校が、この本の中で、帰還兵の自殺の原因について、次のように述べている。
なぜ大半のものはまったくつまずかず、他の者はそうではないのか。その答えは「終わりのない罪悪感。私が理解できる唯一の理由がそれです」

どんな罪悪感が自殺の原因になるのか・・・。この本に書かれている「罪悪感」について、整理してみた。

1. 愛国者がモンスターになる/自己評価の分裂。
帰還兵はよく「モンスター」という言葉を口にします。近未来を描いたSF映画で、人間の心を持たないロボットや、狂気じみた人間が、無実の人々を虐殺するシーンが想起されるのでしょうか。
俺にとって最悪なのは、殺人が気に入ってしまったってことだ。それをするのが得意になった。そういうことが得意で好きになった自分を俺はずっと憎んでいたよ。
ニックは自分のことを真の愛国者だと思っていた。そしてイラクで、最初に出くわした民間人の顔を殴りつけ、次にその民間人を階段から突き落とした彼は、アメリカに戻って妻のサーシャに「自分がモンスターのような気がする」という。
女房に、夫が、結婚相手が、人を殺す夢を見ているなんて知ってほしくない。自分がモンスターのような気がする。話したら嫌われるに決まっている。あんな夢を見るなんて人間じゃない。
戦地に派遣される兵士は間違いなく、愛国心に満ち、知識も教養もあり、心身ともに健康な若者です。
人の命が大切であること、人を殺したり、財産を奪ったりしてはいけないことを当然理解しています。
ただし「軍人」になれば、敵を殺傷するのが仕事だし、上手に、数多く、敵を倒す方がいいとわかっています。

家族と過ごす時間は人間としてふるまい、戦地に行ったら「軍人」として任務を遂行する。
人間/軍人の切り替えがうまくできる間は、人を愛することも、人を殺すことも、迷いなくできるでしょうが、

もし迷いが生じたら・・・、
  家族と過ごす時間に無慈悲な殺人の記憶がフラッシュバックしたり、
  敵を攻撃している瞬間に、敵の瞳と息子の顔が重なって見えたりしたら・・・
「自分は何者!?」と自己評価の崩壊を引き起こすのかもしれません。
人間は機械仕掛けのロボットではないから、ON/OFFを切り替えたり、記憶をリセットしたりはできないんです。

2. 衛生兵の任務、死傷者の体、遺体、遺体の一部の回収。
頭を打たれたエモリーが彼の背中でぐったりとなり、エモリーの頭から吹き出し続ける血が彼の口の中に入り込んで・・。ドスターも任務で道端の爆弾にやられ、何度も何度もずたずたにされている。
ここに登場する元帰還兵は、戦地でも、また母国に帰国して家族と暮らし始めてからも、その後、病気治療のための医療施設に収容されてからも、なんどもなんども「エモリーの血が口の中に入り込んでくる」感覚の再現に苦しみます。

3. 戦地での狂った「日常」
ある兵士は、ある日、「頭蓋骨の山」を発見し、それを「基地まで運んで帰るのが正しいことだ」と思い、頭蓋骨を一つ一つ拾い上げ、自分の車に詰め込み、車を走らせた。しかし、基地のそばまできたとき、車を止めて、頭蓋骨をすべて道端の排水溝の中に蹴り落とした。
人道と戦争の境目、それが基地のゲートだったのですね。
トラックが死体を運んできたとき、「みんなでトラックに駆け寄って写真をとった。う わー、すげえ、こいつはクールだ。」
ある兵士は、「死体の大腿部のあたりをかじりとったような恰好をしている自分の写真を撮った」。
人間は限度を超えた異常な光景を目にすると、笑いの衝動が起こることがあります。
意気盛んな新参兵が現地に降り立って、最初に目にする光景に興奮し、アドレナリンが沸騰することもあるでしょう。
しかし、後になって、「なぜあんなことを・・・」と自分自身の行為に苦しむのです。
あの当時俺たちは最低の卑劣な殺人マシンだった。今その当時を思い返すと、ああ、俺たちは何をやっていったんだ、何を考えていたんだ、と思う。
俺も忘れられないことがある。話せるようなものじゃない。
そのときの写真があるんだ。見せられるようなもんじゃない。
この本の中では、帰還兵たちが、誰にも話せない記憶を抱えて無口になり、家族との人間関係を悪化させています。
同じ境遇にある仲間や知り合いの帰還兵と、よく二人っきりで話し込んだり、長い時間を過ごしたりし、
そんなときにだけ、記憶の話をしたり、隠していた写真を見せ合ったり、
そして「なぜ、あんなことを・・・」と同じ問いを繰り返しています。

4. 仲間を助けられなかった、見殺しにした罪悪感。
部隊が攻撃され、何人もの死傷者が出たとき、
生死にかかわらず、速やかにボディ(体)を回収するのも兵士の仕事です。バラバラになった体の部分も探し出して・・。
ある兵士は、仲間の人数や顔を思い浮かべ、「やれやれ、全員回収できた」とほっとした瞬間に、
(目は)引き出せなかった五人目の兵士を見ていた。焼けたあいつの残骸が運転席のドアから垂れ下がっていた。上半身を守っていたボディーアーマーとセラミックプレートしか残っていなかった。そのイメージがいまも俺を苦しめる。それが俺を変えた。あの場所で俺は かつての自分を失った。
一人、忘れていたんですね。回収しわすれちゃった。「なぜ俺を忘れたんだ」「なぜ回収しにきてくれなかったんだ」とその消失した仲間の遺体にずっと問いかけられている。
お前のせいだお前のせいだ・・
隠された爆弾を見つけるのが得意な兵士。その技で何度も部隊の危機を救った。彼が任務を休んでいたとき、出動した部隊が爆破された。帰ってきた仲間が「あんたがいたら(そして爆弾を見つけてくれていたら)、仲間は死なずにすんだ」と言った。「お前のせいだお前のせいだ・・」そう言われたように感じた(もちろんそうではないのだが・・・)。
誰もが言う「お前のせいじゃない、お前のせいじゃない」と。違う、俺のせいなんだよ。いつもそのことばかり考える。もしあんなことをしなかったら、こんなことをしなかったら。それですっかり頭がおかしくなる。

5. 民間人を殺傷した、人間扱いしなかった罪悪感。
本当に理解したのは、俺の最初の赤ん坊が火傷したのをみたときだ。あそこで彼らを痛めつけたことを済まないとおもうようになった。俺の赤ん坊みたいだ。俺たちは何物でもないように、人間ですらないかのように扱っていた。
俺たちが家を間違えて急襲したことが何度もあった。
【幻覚】ベッドに腰を下ろして部屋の向こう側にある椅子を見ていたらそこに血まみれの女の子がいた。死んだイラク人た ちが浴槽に浮かんでいるのも見たことがある。どうして浴槽にいるのか、さっぱりわからない。いま暴れまわりたい気分だ。
【悪夢】昨日の晩はパトロールで小学校に入っていく夢をみた。女の子たちが悲鳴を上げ、俺はクラス全員を撃ち殺す。こんな夢を見る自分に怒りを覚える。夢が止まらないことに怒りを覚える。
【悪夢】七歳か八歳ぐらい。着ている花柄のワンピースが裂けて、血でぐっしょりだ。目は俺の心をまっすぐに見ているようで。
人の目を見られない。顔を背けようとする衝動。


6. 安保法に関する国会審議。
●2015年7月13日、衆議院、、赤嶺参議院議員:
(米軍帰還兵が)相手が民間人であろうと、動く者は全て殺りくした、動くな、動いたら殺すと言って、もう交戦規則も何もあったものじゃない状態に米軍は陥っていたと。
引用および参考:
>>安保法案の論点整理【衆議院】の「自衛隊時の自殺」
>>衆議院公式議事録

●2015年8/25、参議院、山本太郎参議院議員:
イシャキ村で起きた一家惨殺事件
について、
米軍が踏み込んだのは、そして殺害に及んだのは、地元小学校の教師であった当時二十八歳、ファイズ・ハラットさんの家でした。米兵に殺された中には、生後五か月、三歳、五歳のファイズさんの子供たち、そして三歳のおいっ子、五歳のめいっ子も無慈悲にも殺害されました。被害者の中には、家を訪ねてきていた若い男女もいました。この二人は婚約者同士、次の週に結婚する予定だったそうです。
引用>>国会会議録

ファルージャ総攻撃について
交戦規定は毎日のように、交戦規定が変わっていったといいます。攻撃されていなくても不審な人物と思ったら発砲してよし。不安を感じたら発砲してよし。目が合えば発砲してよし。イスラム教徒の衣装の者は敵対しているとみなして撃ってよい。路上にいる者は全て敵の戦闘員とみなせ。息をしている者は全て撃て。
(イラクで、米軍により)総合病院は米軍に占拠され、市内にあった2つの診療所は米軍が空爆した。消火活動をしていた消防士、警官までも米兵は攻撃した。2004年の最初のファルージャ攻撃では、700人以上が殺害され、2回目の11月、ファルージャ総攻撃では、行方不明者は3000人に及び、6000人もの住民が殺された。中には、白旗を握りしめたままで発見された少年の遺体もあったそうだ。
引用および参考:
>>安保法案の論点整理【参議院】の「イラク市民の犠牲」
>>国会会議録

●安保法で実施が決まった「捜索救難活動」について
政府の主張
捜索救難活動は人道的な活動である。遭難者が見つかった、救助にもう当たっているなどの救助活動を行っている現場が、戦闘現場であっても(になっても)救助を継続できる。
米軍の規定
パイロットその他の航空機搭乗員は高度な訓練を受けていて簡単に育てられないから、回収してきてまた戦ってもらう。階級やスキルが高ければ高いほど多くの情報を持っていて、敵の捕虜になって尋問を受けることで失われるものも大きいから、捕虜にならないように回収に行く。捜索救難活動は米軍の士気の維持に不可欠な任務。かつ戦闘現場を移動するので大きな危険を伴う活動である。
野党から指摘された問題点:
・自衛隊には装甲付の救急車両がない。医者の資格を持つ要員は部隊に一人いるかいないか。衛生兵が包帯、テープなどの貧弱な用具を使って医療活動をすることになる。
・自衛隊がなぜ、米軍のパイロットを救出するために、戦闘現場に軽装備で戦死のリスクまで冒して行くのか。米軍自身の活動をなぜ自衛隊にさせるのか。
引用と参考:>>安保法案の論点整理【衆議院】の「捜索救難活動」

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