【読書ノート】『帰還兵はなぜ自殺するか』---「脳損傷」で論点整理。

【読書ノート】『帰還兵はなぜ自殺するか』---即席爆発装置IEDによる外傷性脳損傷TBIについて論点整理しました。
注意:文中の四角いフレームは、『帰還兵はなぜ自殺するのか-亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ-デイヴィッド・フィンケルからの引用です

アメリカでは、イラク戦争に派遣された兵士の帰国後の「自殺」の多さが問題になっています。戦地での戦死者よりも本国での自殺者の方が多くなってしまったのです。さらに、自殺未遂者の数は自殺者の10倍もいるといわれており、アメリカは全国30数ヵ所以上に帰還兵向けの医療施設を作り、自殺の恐れのあるハイリスクの患者に対し懸命な治療を試みています。
(医療プログラムの施設に持ち込み禁止のもの)
武器ならびに武器として使用可能なもの。カミソリ、ハンガー、ネクタイ、スカーフ、ベルト、靴紐、スウェットパンツの腰ひも、麻ひも、鎖、60㎝より長い首かけチェーン、ストッキングもしくは長い靴下、ガラス製品、電気コード、鋭利なもの、あらゆるタイプのビニール袋。 ---『帰還兵はなぜ自殺するか』より

イラク・アフガニスタン戦争から生きて帰還した兵士の20~30%が心的外傷後ストレス障害や外傷性脳損傷を負っている、という報告もあります。戦地で兵士が遭遇する「見えない敵、即席爆弾装置 IED」と、戦地から無事に戻ってきた兵士を苦しめる「外傷性脳損傷 TBI」について調べてみました。

【読書ノート】『帰還兵はなぜ自殺するか』
即席爆発装置IEDによる外傷性脳損傷TBIの観点から


YouTube「道路脇に仕掛けられた爆弾が爆発し・・・」
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YouTube「イラク戦争 アメリカ軍装甲車を襲うIED(路肩爆弾)」
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イラク駐留の米軍の戦死者の大半が、戦闘ではなく、IED攻撃によって死亡
「対テロ戦争」では、戦闘地域で敵と対峙して砲撃や爆撃によって死傷するだけでなく、一般車両も通行している一見普通の道路を移動中に、路肩爆弾の爆発にあって死傷することも多いのです。そして派遣される兵士の約2割が即席爆弾(IED)に被弾して、外傷性脳損傷(TBI)を発症する可能性があるといわれています。

路肩爆弾、IEDとは
・即席爆弾装置 Improvised Explosive Device, IED
・ありあわせの爆発物(不発弾など)と日常品で作る、起爆装置付きの手製爆弾。
・道路わきなどに仕掛けられたものは「路肩爆弾」と呼ばれる。
・起爆手段は、ワイヤー接触、リモコンや携帯電話による遠隔操作、時間差など。
・小さな手りゅう弾レベルから、装甲車両や戦車を破壊できる大規模のものまである。
・超音速(340m/秒)の爆風を生じる。

前線でドンパチ、は昔のこと。今は「見えない敵」がしかけた「見えない武器」を相手に、兵士はハイテク化した防護服で戦います。進化した防護服のおかげで、爆弾で吹き飛ばされても「死なない」ばかりか、体は無傷でいられるケースが増えたのです。しかし・・・。

TBI、爆風による脳損傷の症状
・外傷性脳損傷(Traumatic brain injury,TBI)は、頭部に物理的な衝撃が加わることで起こる脳損傷。
・爆風による衝撃波が原因で、外傷がないにもかかわらず、脳幹に損傷を受ける。
・著しい記憶障害、めまい、頭痛、集中力低下、人格形成やコミュニケーション能力に問題。
・社会適応性が失われ、通常の生活が送れなくなる人もいる。
・医学的データがなく、脳損傷のメカニズムも不明。
・外見上、健常人と変わらない。診断が難しい。
・脳機能の回復にはリハビリが必要。治療が遅れると症状が固定化する。

重くて硬いヘルメットはIED爆風の圧力を増幅させ、外傷性脳損傷を悪化させますが、
現地での診断は難しく、また外見上無傷なので、
兵士は十分な治療を受けることもなく、すぐに部隊に復帰します。

繰り返し
・イラクでは負傷兵の半数以上が72時間以内に部隊に復帰している。
・その結果、一人の兵士が繰り返し爆風にさらされるようになった。
・十分な治療を受けずに繰り返し爆風にさらされると、TBIの症状を固定化させやすい。

(イラク、アフガンにおいて)
一人の兵士は年に200回以上のパトロールに出て、
平均12~15回のIED攻撃にあった。


先のYouTubeにあったような爆発が、目の前の車両で起きるのを目撃し、そして自分自身もまきこまれることを体験し、対策もなく同じ移動任務を毎日続ける、これがPTSD(心的外傷後ストレス障害)を引き起こす要因になっていたのですね。職業軍人はそれが仕事とはいえ、あまりにも過酷すぎます。

TBIによる戦線離脱、兵士の心理
●兵士は、脳損傷により壊れ続けているのに、助けを求めるのは不名誉なことだと思って助けを求めません。
●五体満足なのに、傷を負っていると言えるのか。おそらく弱い男だからだ。女々しいからだ。意気地なし、クソだからだ。こうした考えが押し寄せてきて止める手立てがない。
●目に見えるケガを負った兵士たち、銃痕のある兵士や手足のない兵士たちは英雄扱いされる。(一方、俺は)戦争から戻った立派な兵士。はずかしかった。彼女(妻)がどう思うか怖かった。
●戦地でそれ以上働けなくなった兵士は、「死傷者」用のヘリコプターで本国に輸送され、家族のもとに返される。
●妻は、夫が戦場に行っている間に家を購入。陸軍に入隊すれば手に入れられる生活・・・家、子供、犬、庭、金、安定した将来。病んで帰還したため、そのような生活は続けられなくなる。
●経済的に困窮、家も手放す。精神をわずらい、自殺を図り、人間関係を悪化させる夫の世話をしながら働かざるを得ない妻。こんなはずではなかった、五体満足なのになぜ帰ってきたの・・・。妻の側も心を病む。 /font>

失業、離婚、飲酒、ひきこもり、繰り返される自殺未遂、自殺。

PTSDの発症
イラク戦争で最悪なことの一つが、明確な前線がなかったこと。360度のあらゆる場所が戦場だった。進むべき前線もなければ軍服姿の敵もおらず、予想できるパターンもなければ、安心できる場所もなかった。兵士の中に頭がおかしくなるものが出たのはそのせいだ。
戦争中の任務は、道端に隠されている爆弾を見つけること。爆弾はいたるところで爆発する。まだ爆弾が見える、しょっちゅう爆弾が見える。これを止めてくれ、爆弾を向こうへやってくれ、もう見たくない、どうすれば爆弾を見なくなるんだ。
ハンヴィー(高機動多用途装輪車両)が砲弾の上を走って、そいつがどんぴしゃで爆発した。彼は車ごと持ちあげられ、下に叩きつけられた。爆風が音速より早く彼の体を貫いたとき、彼の脳はぐらぐら揺れた。そうしてこうなった。記憶、注意力、バランス、聴力、衝動抑 制、認知力、夢、すべてがぶっ壊れた。


日本と自衛隊について考えてみました:

安保法により、日本の自衛隊は米軍の後方支援として、武器等防護や捜索救助活動を行うことになりました。
PKOの安全確保業務(駆けつけ警護)では、住民や建物などの安全確保、特定の区域の保安のための監視・駐留・巡回・検問および警護を行います。

政府当局と反政府ゲリラ、体制派と反体制派が争う現場では、武装勢力と民間人の区別がつきません。
幼児、女性、老人、犬でさえも爆弾をもっているかもしれず、無人でもあらゆる場所に地雷や遠隔操作される爆弾が隠されているかもしれません

捜索救助活動を行う「衛生兵」は、国際法(ジュネーブ条約)で、敵から攻撃されないきまりになっています。しかし、道路に仕掛けられた爆弾は、衛生兵の車や人に対しても無差別に襲い掛かってくるでしょう。そういう恐怖と戦いながら、まさにそういう爆弾によって死傷した兵士の遺体や負傷者を回収するために、自衛隊員は戦闘地域に捜索に行くのです。

参照:安保法案の論点整理【衆議院】捜索救難活動
参照:安保法案の論点整理【参議院】イラク市民の犠牲

国会では、憲法がどう、国会承認がどう、ということばかり議論され、戦争の実態については、
他国がふつうにやっていること
だから、と問題になりません。

しかし、戦地に派遣される自衛隊員、その家族、その友達、民間徴用される立場にある職業の人たちは、自分たちがどこに派遣され、どんな活動をし、どんなリスクがあるかに、少しは関心を持った方がいいと思います。

生命にかかわることです。「死ぬ気になれば」派遣命令を断って、仕事をなげうって、自衛隊から抜け出すこともできるはずです。憲法18条「意に反する苦役の禁止」が、脱退の正当な根拠となります。

「生まれ変わった」つもりになれば、どんな仕事でも一からやり直しができます。国や組織や制度に流されず、面倒だからと思考停止せず、自分を保ち、未来を信じて、最善の決断をしてほしいと思います。身の振り方について、いろいろ考えたくないから軍隊が性に合っている、という人もいます。それはそれとしても、戦地への派遣となったら再度考えてほしいのです。
つまりは、「自分の身は自分で守る」ということです。

参考:国会審議の論点整理赤字は政府側答弁)

柿沢(維新):イラク戦争終結後の米軍の治安維持活動および非戦闘行為に従事したアメリカ兵は、民間人を装った自爆テロや、車に仕掛けられた爆弾、輸送中のヘリの撃墜な どの犠牲になって、930人が命を落としています。これは、イラク戦争の戦闘で死亡した139人を大きく上回る数字です。いつ、どこで狙われるかわからない不安の中で、自殺したり精神的な疾患になった米兵はさらに多いです。アフガニスタンの国際治安支援部隊の活動で、治安維持活動等に当たったドイツ軍やイ タリア軍の兵士の犠牲者が数百人規模に上っています。自爆テロやあるいは車爆弾、また輸送中のヘリの撃墜、こうしたリスクを伴う治安維持活動に自衛隊を派遣し得るようにするのが今回の安保法制です。これのどこが自衛隊のリスクは増大しないということになるんですか。
中谷防衛大臣:今回は新たな任務として、確かに(リスクが)ふえる部分がございますが、これにおいても安全についての規定なども設けておりまして、実際やるかやらないか、 この段階で本当にやって大丈夫なのか、そしてそれが任務達成できるのか、そういうのを判断して実施するわけでございますので、リスクに対しましても十二分に配慮をしながらやっていくということでございます。
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小池(共産党):対テロ戦争の現場では銃撃戦よりもIEDなどによる犠牲者が圧倒的に多い。サモワでもIEDを見たという話だ。非戦闘地域でもIED攻撃はある。物資輸送中にIEDで吹き飛ばされる。あらゆる場所が一瞬で戦闘現場になる。安全な場所で行うから大丈夫だなど言えない。
総理:安全確保は、一人も死傷者ができなかった過去と同じようにおこなう。
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初鹿(維新):派遣された自衛隊員が今まで以上に厳しい現場を見るわけですよね。目の前で人が殺される、場合によっては自分が武力攻撃をして相手を殺すこともあり得る、そういう行動をこれから自衛隊員にしてもらおうというのがこの法案なわけです。帰還した自衛隊員がPTSDを発症する、もしくはその結果として自殺をする、その可能性が高まるんじゃないですか。派遣をされている間にメンタル上の問題が生じた隊員は帰還(帰国)をさせますか。
中谷防衛大臣:メンタルヘルスケアについては十分留意をして実施させます。
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非戦闘現場であれば支援が可能なんだということになりつつあるようですけれども、非戦闘現場というものが突如として戦闘現場になるということもあり得るこ とも考えられますし、従来のようにあらかじめ安全な実施区域を定めておくという制度に比べて、日本が戦闘に巻き込まれていく、そういう危険性というものが かなり大きくなってきているのではないか、ここは危惧されるところであります。(7/6、落合、参考人質疑)

(政府)新法では、自衛隊の活動範囲が拡大し、戦闘行為と一体不可分である兵站活動、米軍の武器等防護、他国領域内での敵基地攻撃が可能となる。

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(政府)捜索救助活動は人道的な活動である。遭難者が見つかった、救助にもう当たっているなどの救助活動を行っている現場が、戦闘現場であっても(になっても)救助を継続できる。


参考:
太字のリンクはぜひ一読をおススメします。

◆Amazon書店『帰還兵はなぜ自殺するのか、デイヴィッド・フィンケル (著), 古屋 美登里 (翻訳)』
◆生き残った帰還兵と家族の“その後”を追った『帰還兵はなぜ自殺するのか』の書評
◆on the front line in the war on terror/移動支援フォーラム
◆ウィキペディア即席爆発装置
◆ウィキペディア 外傷性脳損傷
◆「捜索救助活動」のグローバル化――「周辺」と「後方地域」が外れた効果
◆安保法案の論点整理【衆議院】  
◆安保法案の論点整理【参議院】 

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